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名古屋地方裁判所岡崎支部 昭和41年(わ)503号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕(罪となるべき事実)

被告人は、昭和三二年七月三〇日大型自動車、普通自動車、自動三輪車の各第一種運転免許を取得し、爾来自動車運転の業務に従事していたものであるが、昭和四一年三月一〇日ごろ、加藤建材の商号で運輸大臣の免許を受けることなく、自家用貨物自動車を使用して自動車運送事業を営む加藤一市方にいわゆるダンプカーの運転手として雇われ、右加藤一市において株式会社美濃砕石が愛知県東加茂郡旭村大字小渡池内の同会社採取現場で採取する川砂、砂利等の運搬を請負つていたため、同年一〇月二五日ころから宿舎にあてられた肩書住居に同僚の運転者三名と起居して、右請負にかかる川砂、砂利等の運搬に従事していたところ、昭和四一年一二月一五日午前四時ころ起床し、いわゆる積み置きと称し、前夜終業の際早期に出発できるよう荷積を了してあつた加藤一市方大型貨物自動車(岐一な五二二八号)を運転し、東春日井郡旭町まで川砂を運搬して午前七時ころ前記採取現場に帰来し、朝食後、引続き豊田市大字堤宇住吉所在矢作建設株式会社アスファルト・プラント工場まで川砂を運搬するため、前記自動車を運転して右採取現場を出発したのであるが、

第一、被告人は前記貨物自動車に判示第二摘示のとおり、最大積載量を超過する川砂を満載してこれを運転し、同日午前八時五〇分ごろ西加茂郡猿投町大字越戸字太戸一番地の二所在駒形神社沿い国道第一五三号線道路上を、足助町方面から豊田市方面に向け時速約五〇キロメートルの速度で進行中、数日来の過重労働により疲労気味であつたことに加え、同日前記のとおり早期起床し、充分な睡眠をとることなく仕事を続けていたため、車内のヒーターによる暖房のせいもあつてねむ気を催し、最早安全な運転を期し得ない状態に立至つたのであるが、とりわけ同所附近の道路は各種車輛の往来がひんぱんである割に約七メートルの幅員を有するに止まり、人車道の区別もなく、歩行者には危険な交通状況にあり、常日ごろ被告人は仕事の関係で同所附近を自動車で走行していてその交通状況を充分熟知しておりかつまた同所から約一キロメートル前方の道路沿いには猿投町立越戸保育園があつて、同保育園に通園する園児らが右道路を通行し横断している姿を認めていたのであるから、このような場合自動車運転者としては、直ちに自動車の運転を中止して適当な休息をとるなり或は外気に触れるなどして、ねむ気を解消させてから運転を再開することにより、事故の発生を未然に防止しなければならない業務上の注意義務があるにもかかわらずこれを怠り、そのまま運転を継続した過失により、同所から約九〇〇メートル進行した同町大字越戸字松葉七五番地の五所在小野鉄工所前附近路上に差しかかつた際、意識を失い睡眠状態に陥つた。折柄、被告人車の進路前方約一〇〇メートルの道路上には道路北側沿いにある同町大字越戸字松葉五二番地所在の前記猿投町立越戸保育園正門前附近を、右側通行により道路の南側に沿つて同保育園に登園する園児ら約三〇数名か、同保育園で園児の交通事故防止対策としてとつていた登園方法に従い、二人づつ手をつないで縦列をなし、その先頭に同保育園の保母、原融美が黄色地に赤色で「止まれ」と書かれた旗をかかげて園児らを誘導し、その最後尾に当番制で園児らに同伴することとなつていた保護者の渡辺さち子が附き添い、右両名の間で園児の列の道路中央側に一本の麻製ロープ(昭和四二年押第二号の一)を張りわたしてその両端を持ち、道路中央寄りを歩く園児らの左手にこれを持たせて園児らが道路中央に出るのを防止しながら保育園の正門前に向つて進行しており、右園児らの列の手前には、被告人車と同一方向に向つて岩田章平の運転する小型貨物自動車(保育園児、岩田文子、同岩田幸美、同宮田奈保美、同近藤英子および今井ふじ子が同乗)が道路南側寄りに一時停車し、その前方を園児の列が保育園の正門に向つて横断するのを待ち合わせていたのであるが、園児の列の先頭に立つた前記原融美において右岩田章平の車の後方から走行して来る被告人車を認め、その通過を待ち受けるため一時道路端に園児らを停止させていた。

被告人は前記のとおり睡眠状態に陥つたまま自動車を走行させていたため、右園児の列並びに岩田章平の自動車に全く気付くことなく、時速約五〇キロメートルの速度で保育園前路上に向つて直進し、自車の左側部を平田章平の車の右後部に追突させたうえ、その衝撃で始めて目を覚ました被告人は、狼狽の余り右足でアクセルペタルを、左足でブレーキペタルを踏み、衝突で左に方向を変じた被告人車を道路端に佇立する前記園児らの列の中に暴走突入させ、よつて別紙死亡者一覧表記載のとおり保母原融美のほか保育園児一〇名を同表記載の日時場所において死亡するに至らしめるとともに、別紙負傷者一覧表記載のとおり、渡辺さち子、渡辺美季、岩田章平、今井ふじゑのほか保育園児一八名に対し加療約一週間ないし六ケ月間を要する同表記載の各傷害を負わせ

第二、法定の除外事由がないにもかかわらず、前記日時ごろ愛知県西加茂郡猿投町大字越戸字松葉五二番地附近道路において自動車検査証に記載されている最大積載量六〇〇〇キログラムを越える九三七〇キログラムの砂を積載して前記大型貨物自動車を運転し

たものである。

(証拠の標目)<略>

(法令の適用)

被告人の判示第一の所為中、別紙死亡者一覧表記載の各被害者に対する業務上過失致死の点および別紙負傷者一覧表記載の各被害者に対する業務上過失致傷の点はいずれも刑法第二一一条前段罰金等臨時措置法第三条第一項一号、第二条に、判示第二の所為は道路交通法第五七条一項、第一二〇条第一項第一〇号、同法施行令第二号に各該当するところ、判示第一の各業務上過失致死傷の所為は一個の行為であつて数個の罪名に触れる場合であるから刑法第五四条第一項前段第一〇条により犯情重いと認める原融美に対する業務上過失致死の罪の刑に従つて処断することとし、所定刑中禁錮刑を選択し、以上は同法第四五条前段の併合罪であるから同法第四八条第一項により、禁錮刑についてはその所定刑期の範囲内で被告人を禁錮三年に処し、判示第二の罪所定の罰金刑については所定罰金額の範囲内で被告人を罰金一〇、〇〇〇円に処し、被告人において右罰金を完納することができないときは刑法第一八条により金四〇〇円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置し同法第二一条により未決勾留日数中六〇日を右禁錮刑に算入し訴訟費用は刑事訴訟法一八一条第一項本文により被告人にこれを負担させることとする。(植村定一 名越昭彦)(山下進は転任のため署名押印できない。)

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